エスパルスのゴトビ監督が解任されました。

知ったのは昨夜遅く。
寝る前にTwitterを開いたらTLに「ゴトビ監督解任」の文字が。

言葉が出ませんでした。
言葉の代わりに出たのは、涙。
止めようとしても止まらなかった。

サッカーを見始めてまだ8年だけど、色んなチームでたくさんの監督の交代、解任劇を見て来た。
個人的にゴトビさんは大好きな監督さんだけれど、このところの状況と、このまま結果がでなければ間違いなく今季いっぱいで解任されるだろうと覚悟はしていました。

覚悟はしていたんだけど、このタイミングでの解任はショックだった。
前節の柏戦に勝って、あの素晴らしい試合を見て、「まだまだもう少しゴトビサッカーを見ていたい」と思った矢先のこのタイミングだ。

でも、泣くほど悲しくなるなんて、自分でも思ってもいなかった。
過去に、私が大好きだったバレンシアのウナイ・エメリが解任されたときもすごくすごく悲しかったけど、でも、泣かなかった。それなのに昨日、ゴトビさん解任の事実を知ってしばらくは何も考えられなくて、その間、ただただ涙があふれた。

何がそんなに悲しいんだろう…って自分で考えた。

この4年間、成績という数字だけ見たら、確かに結果は出せていない。
勝利至上主義のサポにとっては、ゴトビさんは決して名将とは言えないのだろう。
昨日のTwitterで、「ゴトビさんは人間的には良い人かもしれないけど監督としては失格で、ゴトビ信者はそこを混同している」と言ってた人がいたけれど、監督として失格だっただろうか?と、私は思う。

日本の田舎の小さなクラブに、ゴトビさんは心血を注いでくれた。
資金力の乏しいチームで、自分の持っているコネクションやアイデアでなんとかエスパルスを変えようとしてくれた。
そのすべてに、ゴトビさんのエスパルスに対する愛情を感じる。

サポに対してもいつもフレンドリーでサービス精神旺盛で、監督自ら盛り上げようとしてくれているのをいつも感じていた。
2年前くらいに三保で行われたファンサービスイベントに行った時には、サポの群衆の中にゴトビさん自ら飛び込んで来て、色んなサポとハグしたり握手したりと、一生懸命コミュニケーションをとってた。そんな監督あんまりいないと思う。

日本に、まして静岡になんて縁もゆかりもない人が、「監督を引き受けたからには」と、一生懸命エスパルスを盛り上げようとしてくれていた。健太監督のあと、主力のほとんどが移籍して意気消沈したチームとサポを救ってくれたのは、ゴトビさんだったと私は思っている。
奇しくもゴトビさんがやってきた年は、あの東日本大震災で、被災地はもとより、日本全体が暗く沈んでいたあの時期だ。外国人の新監督はどうせ地震におびえてすぐに帰国しちゃうんじゃないか…と実はあのとき思っていたのに、ゴトビさんは帰らなかった。それだけで何かとても救われた気持ちになったことを今も覚えている。

ゴトビさんのサッカーそのものも私は個人的にとても好きなサッカーだったし、限られた資金力と今いる選手たちだけでその理想のサッカーにどうしたら近づけるか…というのを、監督自身色々考えてやっているなぁと感じていた。
例えば、石毛くんみたいな高卒ルーキーを起用したり、その石毛くんや河井をSBにコンバートしたりという、ともすると賭けみたいな奇抜な起用法は個人的にはとてもワクワクしたし、海外サッカーではどちらもそんなに珍しいことではなかったから、やはりやり方が外国人監督らしいな…という印象も受けた。
でも、そういうゴトビさんの新しいやり方に納得のいかないサポさんも結構いたらしい。
そのことを知った時、私はかつて息子たちが地元のサッカー少年団に在籍してたときのことを思い出した。

以前、2人の息子が、地元のサッカー少年団でサッカーをやっていた。
当時、私が見た少年サッカーの世界はひどかった。
静岡と言う土地柄か、子どもたちの保護者にはサッカー経験のある父親が多く、チームの方針や監督の指導法は無視して自分の子どもだけを応援したり勝手にコーチングする親が多かった。
そういう親たちは大抵、少年団の監督に対してリスペクトのかけらもなかった。
監督の指導法に文句をつけては「ここにいてもうちの子はうまくならないから」と親にやめさせられる子も多かった。

ただ、保護者ばかりでなく、協会やチームや、少年サッカーに関わる上の人たちにも問題があると、その時私は感じていた。
とにかく、昔からのやり方を変えたがらない人が多かった。
新しいことを取り入れようとしないし、それをしようとする人を排除し、変化をかたくなに拒んだ。
頭の固い、古い考えの人が多い…というのが、そのときの私の印象だ。

なでしこで女子サッカーがメジャーになった今はきっと違うと思うけど、当時は「オンナがサッカーに口出しするんじゃねえ」という空気もあった。
私は当時、必要に迫られて審判資格を取り、子どもたちの試合で主審や副審をやった。
当時は女性の審判員が珍しく、試合で審判を務めると保護者から「審判オンナだよ。ついてねえ」などと聞こえるように言われたり、主審を務めたある試合では、チームの指導者が子どもたちに「主審オンナだから気をつけろよ」と言っているのが聞こえたりしたこともあった。
育成の段階でこういう大人たちを見てる子どもたちは、将来どんな選手になるんだろう…と、ずっと思っていた。

こういう、昔からの考え方を変えられない、新しいものを拒む体質というのを、一部のアンチゴトビ派の中に感じた。
正直、そういう考え方自体が田舎臭い…などと、私は思ってしまう。
古き良きものはそのままに、でも、新しいものも取り入れつつ…というやり方はできないものか?…と、少年サッカーでゴタゴタもめてた頃に感じていたそれを、今また思い出させられた感じだ。

アンチゴトビに拍車がかかったのは、ユース上がりの選手が次々にレンタルにだされたことも大きな理由の一つだったと思う。
それもまた、少年サッカーで自分の子どもだけしか応援しなかった保護者とかぶる。
レンタルに出されると言うことはよそで試合にいっぱいでて経験積んで来いってことであって、別にないがしろにされたわけじゃないのに、「ゴトビはユース出身の選手を簡単に切る」と怒っている人が結構いるってことに驚いた。
海外サッカーでは監督が変わった途端、レンタルどころか「構想外」とすっぱり首を切られることも珍しくないのに。
「ゴトビのせいでレンタルに出された選手がかわいそう」なんじゃなくて、「悔しかったらレンタル先で頑張って戻ってこい!」なんじゃないの?と思う。選手だってプロなんだから「かわいそう」なんて同情はされたくないだろうし、そこで頑張れるかどうかってのもきっと見られてるんだと思う。
はっきり言えば、私は監督の要求に応えようとする努力ができない選手は成長しないと思ってる。
「自分のプレースタイルはこうじゃない」とか、「このポジションしかできない(あるいはやりたくない)」とか、「監督の考え方に合わない」とか言ってるようじゃ、そのうち行き場を失うと思う。
あ、別に誰か特定の選手のことを言ってるわけじゃなくて、これはあくまで私の個人的な考え方の話だけど。

私は静岡で生まれて静岡で育った身でありながら、実はサッカーにはまったのは海外サッカーからで、エスパサポ歴はまだわずか7〜8年だ。
だから、チーム発足時からサポをやってる人たちとは、考え方が違うのかもしれない。私のような考えは、「古いものを大事にしたい人」たちにはきっと受け入れられないだろう。

なんだかこういうことを考えていると、監督が変わったことで良い方向に行くようには思えなくて困る。
だって、後任はエスパルスOBの大榎監督だから。
やっぱり、小さくまとまりたいんだな…という印象を受けてしまった。
もちろん、大榎さんを批判してるわけではない。
昨年、大榎さんが率いていたエスパルスユースは強かったしね。

私はこの4年間、ゴトビさんのおかげで楽しかった。
自分が好きだった海外サッカーとエスパルスはそれまでまったく別ものと思っていたけど、ゴトビさんのおかげでその距離が近くなった気がした。
攻撃的な戦術から失敗すると大敗することも多かったけど、ハマった時には最高に面白いサッカーが見れた。

いくら嘆いてももう決まってしまったことなので納得するしかないし、もちろん大榎監督のエスパルスも今まで通り応援する。
外国人監督とうまく意志の疎通ができなかった選手たちが、エスパルスOBである大榎さんの下で気持ちを一つにして良い方に向かえば良いし、そうなってほしい。

だから、ゴトビさんへの思いは今日ここで全部吐き出して終わりにします。

ただただ、ゴトビさんには感謝の気持ちしかありません。

エスパルスを愛してくれてありがとうございました。

監督としてのこれからのご活躍をお祈りし、この小さな町からずっとずっとゴトビさんを応援しています。